「泣き入りひきつけ(または憤怒けいれん)」という言葉、知っていますか?あと、「舌癒着症」という言葉も。
私は出産後にこれらの言葉を初めて知ることになりました。生まれたばかりの娘の泣き方にちょっと違和感を感じたのをきっかけに。
実際に医師からはっきりと診断名として言い渡されたわけでもないのですが、当時めちゃくちゃ悩んで結構落ち込んだり不安に押しつぶされそうになったりしたので、その時のことを備忘録的に振り返ってみようと思います。
産後の入院中は気になっていなかった
わたしは帝王切開での出産だったため、母子同室の時間が短かったこともあって、入院中は娘の泣き方についてとくに気になることはありませんでした。
麻酔が切れて多少動けるようになるまでの間、娘のことをたくさんの助産師さんが見てくれていましたが、誰からも泣き方がおかしいなどと指摘されることもなく、主治医の先生からも手術担当の先生からも何も言われたことはありませんでした。
ギャン泣き中に数秒間息を忘れ、顔が鬱血
退院後、最初に違和感を感じたのは夫と実母と一緒に娘の沐浴をしている時でした。
まだ生後2週間にも満たない、ちょっとした刺激や環境の変化でも大泣きしてしまうほど小さな頃。
タオルで体を拭く刺激でギャン泣きしたかと思ったら、数秒間呼吸困難のような、息の吸えない状態が続いて顔色がみるみる赤黒い色になってしまったのです。
焦って体を揺らしながら名前を呼び続けると、数秒間の沈黙の後、ひときわ大きな泣き声と共に呼吸が戻り、泣き止んだ後は何事もなかったようにケロッとしている…。またはそのまま「スッ」と眠ってしまうこともあって、気絶してたのかどうかは判断がつかなかったけど、とにかく怖かったのです。
SIDS(乳幼児突然死症候群)の原因とかだったらどうしよう…。
焦りながら「赤ちゃん ギャン泣き 鬱血 呼吸が止まる 対処法」などで検索すると、「泣き入りひきつけ」「憤怒痙攣」などのワードがひっかかり、ほとんどのページで、下記のような内容が書かれていました。
乳幼児が大泣きした後、呼気(息をはいた)状態のまま、呼吸停止し、顔色不良、意識喪失し、全身の脱力(ぐったりする)やけいれんなどを起こす病態を「泣き入りけいれん(憤怒けいれん)」といいます。頻度は生後6ヶ月から2〜3歳くらいまでの児の4〜5%にみられ、比較的多い疾患です。一般的に脳波や画像検査に異常なく、年齢的成長発達に伴って自然に消失して行く予後が良い疾患です。
(広島市民病院小児科 伊予田邦昭/2016年7月QA委員改変)
引用元
検索してみても実際に診て診断してもらったわけではないので不安は消えず、不安は増すばかり。
「生後6ヶ月ではなく新生児というのはもっとレアなんだろうか…。」「予後が良いと書かれてはいるけど、もしこの泣き方が3歳まで続いたら…。私の心臓の方がもたないよな…」などと落ち込み、本当に大丈夫なのか、重い病気が隠れてはいないかと心配でたまりませんでした。
母乳相談室の助産師さんに「舌癒着症」かも?と指摘される
母乳の量が増えず一向に乳頭保護器が外せなくて悩んでいたタイミングでもあり、民間の母乳相談室(助産師さんが運営している母乳トラブルについて相談できる施設)に行った時のこと。
乳頭保護器をはずして飲ませる練習をしていた時に「泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)」の症状がでてしまいました。
それを見た助産師さんに言われました、
「カンの強い子みたいね」
カンの強い子…癇癪持ちという意味で仰っているようでした。
新生児で、どんな性格の子に育つのかまだまだ未知数の頃にそう言われ、さらに不安になりました。
「癇癪持ち」って、元々の気質として「ブチギレやすい子」ということ?キレるたびに呼吸がおかしくなってしまう状況が長くて3〜4歳まで続くかもしれないし、例えば予防接種とか痛いことさせなきゃいけない度にひきつけを起こすのかなぁ。それにずっと付き合っていけるのだろうか…。不安はさらにふくらみました。
そして、保護器なしで母乳が飲めるように再チャレンジした時に、2回目の泣き入りひきつけが起きました。
1回目よりもっと強い症状がでて、ひときわ大きな泣き声になったのです。
それを見て助産師さんが、さらに険しい顔になり、こう言いました。
「これは…舌癒着症かもしれないね」
いままで聞いたこともない新しい医療用語が出てきて、さらに不安になりました。
舌喉頭偏位症(ADEL)いわゆる舌癒着症は、舌の裏にあるスジの突 っ張った舌小帯短縮症のことではありません。舌小帯の有無にかかわらず舌 が前につきその後ろの喉頭(気管の入り口)が前に倒れていると空気の流れが悪くなり呼吸が抑制されていること(下図左)をいいます。程度の差 はありますが、ほとんどの人は舌癒着症なのです。 舌小帯とその奥の筋肉の一部を切る数分の手術によって、舌や喉頭が後ろに下がり喉頭が直立し空気の流れがとてもよくなり(下図右)、舌癒着 症状は劇的に改善され精神的にも安定し、お子様の場合育てやすくなります。
手術直後からおっぱいの飲み方がソフトになり乳頭や乳房の痛みが軽くなります。のけ反って苦しそうに泣いたり、寝つきが悪い、眠りが浅いな ども改善するため子育てはとても楽になります。
日本舌癒着症学会HPより引用
引用元
舌癒着症とは、咽頭部分の奇形が原因で呼吸がしづらくなったり母乳の飲み方がうまくいかなかったりすることのようです。
もし本当に舌癒着症だとして、改善するには手術が必要というのはショックでした。
そうだとしたら娘のこれからの生活に支障が出る前に、きちんと治してあげたい。だけどこんなに小さくてほにゃほにゃの赤ちゃんにメスを入れるのは極力避けたい。
また新たな葛藤と不安が増えました。
ちょっと遠いけど、舌癒着症を診てくれる先生がいるとのことで情報を教えてもらい、母乳相談室をあとにしました。
舌癒着症かどうか診断を受けに遠方の病院まで行くことを本気で検討
「舌癒着症」の話を夫にも共有しました。
当時泣き入りひきつけになる頻度も増えてきていて、私も夫も、娘の泣き方に不安が高まっていました。
「いつまでも不安なままにしないで、一度専門の先生に診てもらおうか。」
まだ授乳の間隔が開かず、近場のお出かけにも慣れていない頃なので、電車を乗り継いで行くか、夫が車をだすか、具体的に話し合うところまでいきました。
でもその前に1ヶ月健診があるので、その時に相談してみよう。ということで、一旦保留になりました。
1ヶ月健診時に医師にそうだんするも、!?な回答
1ヶ月健診当日。出産した病院の小児科で医師に相談しました。
健診中には泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)の症状が出なかったので症状を診てもらえなかったのですが、不安に思っていることを相談すると、「は!?」と思う返答が返ってきました。

様子見でいいでしょう。呼吸が止まったときは救急車呼んで来てください。

えっ…?(呼吸止まってからでは遅いのでは…?)
なんだろう…この流れ作業で適当にあしらわれている感…。
先生からしたら新生児の泣き入りひきつけ自体ありふれていて、いちいち対処してられないのかもしれませんが、なんだか腑に落ちず、「様子見でいい」と言われたのに不安が解消されるわけでもなく…。
なんだか消化不良に終わりました。
大学病院の母乳外来の助産師さんから聞いた意外な言葉
当時は母乳トラブルで、相談先を転々としながら探していたので、出産した病院の母乳外来にもお世話になっていました。
そして、ちょうどその授乳指導の時に娘が泣き入りひきつけの症状になったので、担当してくれた助産師さんに相談しました。
すると

ああ、これかぁー!うんうん、呼吸止まってないですよ。うふふ。だいじょうぶ!
と…。
拍子抜けでした。大学病院で何百人も(もしかしたら4桁いくかも?)の赤ちゃんをお世話して来た助産師さんがそう言うんだから、大丈夫って思っていていいのかな?
少し不安が和らいだ気がしました。
結局診療相談や治療は受けず様子見に
助産師さんに「舌癒着症かも」と指摘されたことをきっかけに、不安が高まっていた頃、看護師の友人にも相談しました。
すると、開口一番

う〜ん。その助産師さんってどうなの?
助産師さんって出産に関しては看護師よりも決定権や権限がある立場だけど、医師でもないのにそういう診断めいたこと言うのってどうなのかな?
とバッサリ。
まさか「助産師さんの言動を疑う」なんて考えたこともなかったので、目から鱗でした。

あとさ、いたずらに不安を煽ってる点も、同じ医療従事者として気になるよね。
私は普段から患者様を不安にさせないように結構神経つかってるからね。
そういう部分も、誰の言葉を信じるかの判断基準にしてもいいんじゃないかな?
そうか…ただ闇雲に、医療関係者の言葉を鵜呑みにするのではなく、結局は自分で情報を選んで判断していくしかないんだな。
友人の意見でなんだか目が覚めた気がしました。
そして結局、遠方に行かないと舌癒着症の診断をしてくれる先生がいないということと、生まれた病院では「様子見でいい。」と医師から診断してもらったことを信じて、舌癒着症の診断や手術のことは一旦保留にして考えないことにしたのでした。
いつの間にか治った?
それ以降は、お宮参りでフォトスタジオの撮影をした時に泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)のけっこう酷めの症状がでたり、デイケアサービスを利用していた生後4ヶ月くらいまでは、助産師さんの沐浴の時に数回ほど症状が出ていました。
でも、なぜか恐れていた予防接種の時には、泣きはするものの泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)は1度も出ませんでした。
症状が出なくなって来た時期は、はっきりとは思い出せないけど、おそらく首が座って自分でお座りができるかできないかくらいの時期。
そしてこの記事を書いている現在(娘1歳)は、症状はほぼ0。泣く前にためることはあっても、呼吸がおかしくなることは全くと言っていいほどなくなりました。
今回学んだこと
体に関わる大事なことは信頼できる医師にきちんと相談できる体制を作ることが大切だということ。
情報に翻弄されずに時には疑うことも大切で、自分でしっかりと取捨選択して行かなければいけないということ。
を今回学びました。
不安な気持ちに任せて舌癒着症の診断を焦り、本来は成長とともに治るはずだったのに、早まって手術をして娘の喉を切ってしまっていたとしら…。と思うとゾッします。
産後のホルモンが乱れる不安定な時期とかさなったと言うのもあるけど、母親として不安に飲み込まれている場合ではないなと。
今回のことを通じて、出産直後からこれから娘を守っていく立場としていろいろ「試された」感じがしました。
これからも子育ては長く続いていくわけで、不安になることもたくさんあると思うけど、そのときは一旦立ち止まって一つひとつ冷静に判断していけるようになりたいです。
